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新型うつは甘え?仮病?現代若者の病を紹介し、永遠の難題に挑む。

どうも、精神病にかかったことのないなまぱんです。「新型うつ」について、以下のツイートが気になりました。

※ワロリンスさんは、「これ見るだけだと…」と言っていて、本当は新型うつの奥にはもっといろいろあるというのは含んだ上でのツイートだと察せられます

ぼく自身は健常者の視点しか持っていないので、どうしても健常者寄りの視点になってしまう部分があると思いますが、できる限り感情論を排して新型うつについて紹介してみます。そして、「病気なのか、そうではないのか」「甘えなのか、そうではないのか」という永遠の難題に挑みます。現役うつ病患者の方も、「だから病気だって言ってんだろ」と言わずに読み進めていただければ幸いです。

 

 

新型うつとは

「新型うつ」の特徴

従来型のうつに比べ、以下のような特徴を持つとされる。

  1. 若者に多く、全体的に軽症。
  2. 気分反応性がある。つまり、嫌なこと(仕事など)に直面すれば気分が落ち込むが、楽しいこと(遊びなど)に直面すれば楽しく過ごせる。
  3. 仕事や学業上の困難をきっかけに発症する(軽度のPTSDと診断されることも)。
  4. 病前性格として、「成熟度が低く、規範や秩序あるいは他者への配慮に乏しい」などが指摘される。
  5. 「うつ病」と診断されることを望み、また、他人に「うつ病」を告白することに積極的。
  6. 抗うつ薬の効果が弱いことが多い。

参考:うつ病Q&A非定型うつ病の原因と発症しやすい傾向について等。

このように特徴を並べてみると、確かに「甘え」「仮病」と非難されても仕方なさそうなラインナップである。特に2の気分反応性が批判の的となりやすい。新型うつの人は「仕事を休んで飲み会で騒ぐ」ということができてしまうので、よほど好意的に接しようとしない限りは「甘え」と解釈してしまうのは全く不思議なことではない。

 

「新型うつ」 =「非定型うつ病」

メディアでは、一般的に「新型うつ」という呼び方が用いられる。この呼び方を用いる場合、「若者の甘えによる妄想である」と断罪するような文脈であることが多い。一方、医学会では「非定型うつ病」と呼ばれており、この名称で学問的にもしっかりと議論されているようだ。メディアによる「新型うつ」という言葉は、しっかりとした定義をされずに用いられているので、「新型うつ」=「非定型うつ病」と断言することはできないが、実際には同じまたはほとんど同じと捉えている人が多い。

「新型うつ」という呼称には悪意がこもっていて扱いづらいので、ここから先は「非定型うつ病」という呼称を用いる。ちなみに、「新型うつ」は俗称であって病名ではないので、新型うつとは呼ばないことが推奨される。

 

非定型うつ病の診断基準

非定型うつ病の診断には世界保健機構(WHO)によるICD-10とアメリカ精神医学会によるDSM-5が広く用いられているが、DSM-5の方が分かりやすいのでこちらを紹介する。

DSM-5では、以下のように非定型うつ病の診断が2段階に分けて行われる。

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1段階目で「うつ」であることを判定し、2段階目で「非定型」であることを判定するという形。

1段階目の診断基準(=「うつ」のチェック)
  1. ほとんど1日中・毎日の抑うつ気分。青年ではイライラした気分のことも。
  2. ほとんど1日中・毎日の、ほとんどすべての活動における興味・喜びの著しい減退
  3. 著しい体重減少・増加(1か月で5%以上)、または食欲減少・増加
  4. ほとんど毎日の不眠または睡眠過剰
  5. ほとんど毎日の精神からくる焦燥または制止
  6. ほとんど毎日の疲れやすさ、または気力の減退
  7. ほとんど毎日の無価値観、罪責感
  8. ほとんど毎日の思考力や集中力の減退、または決断困難
  9. 死についての反復思考

参考:DSM-5 Depressive

「これらの症状のうち5つ以上(1か2のどちらかは必須)が同一の2週間のうちに存在」し、かつ、

「著しい苦痛または社会的・職業的な障害を引き起こしている」

場合、うつ病であると診断される。

このチェック基準は、定型うつの診断にも用いられるものなので、非定型うつ病の症状とはやや異なる特徴も多い(2, 7, 8などは非定型うつ病では認められないことも多い。また、1の抑うつ気分は、非定型うつ病では1日中ではないことが一般的)。

2段階目の診断基準(=「非定型」のチェック)
  1. 有意の体重増加または食欲増加
  2. 過眠
  3. 手足が麻痺し、鉛のように重く感じる感覚(鉛様の麻痺)
  4. 長期的に、人に拒否されることに敏感で、そのことが社会的または職業的な障害を引き起こしている

「これら1~4の症状のうち2つ以上に該当」し、かつ「気分の反応性(楽しいことは楽しく過ごせる)」があり、しかも「他のうつではない」場合、非定型うつ病の診断となる。

 

 

非定型うつ病は病気?それとも甘え?

前置きが長くなった。そろそろ結論を言ってしまおう。

私の考えでは、非定型うつ病は「もともとちょっと塞ぎ込みやすい性格を持つ人が、何かをきっかけに強烈に塞ぎ込んでしまい、手がつけづらくなった」状態だ。また、そんな自分も社会に認めてもらいたいという欲求をもつ場合も多い。そして、非定型うつ病では「自分に甘い」面が顕在化しているが、この甘さは非定型うつ病の原因ではなく結果であると捉えるのが適切である。

※もう少し定義っぽくするなら、「患者自身が先天的に持つ、あるいは後天的に培った、外的要因により著しく塞ぎ込みやすい性向。また、それがあるきっかけのもとに顕在化し、暴走した状態。またそのことを人に理解され、許し、認めてもらいたい欲求のある状態」と言いかえてみよう。

そして、これを病気と呼びたいのであれば病気と呼んでもいいが、典型的な病気とは異なる側面を持つと考える。

太字部分について、それぞれ以下で詳しく説明する。

 

非定型うつ病の人はもともと塞ぎ込みやすい人

本人が自覚しているかどうかにかかわらず、非定型うつ病になる人は塞ぎ込み・落ち込みやすい性格を持つ。これはPTSDと比較してみれば、そう考えざるをえないと分かる。

PTSDと非定型うつ病は症状が酷似している。そのため、非定型うつ病とPTSDの区別は、症状よりはきっかけによるところが大きいようだ。たとえば戦争などの、誰が見ても強烈な体験を経て精神がやられた場合には、PTSDの診断を受ける*1。裏を返せば、非定型うつ病のきっかけというのは戦争ほど強烈な体験ではなく、「気にしない人は気にしない」レベルの事案なのだ。よって、非定型うつ病になる人は、「もともと落ち込みやすい性格を持つ」といえる。少なくとも、「強靭なメンタルを持つわけではない」とは言えるだろう。

 

非定型うつ病は甘えか?

「仕事のときだけ抑うつ状態」(気分反応性)というのが、健常の人から見るととても都合よく見える。そしてこれが「非定型うつ病は甘え」と言われる一番の要因だ。

「仕事をしているなら誰でも辛いことや悩みはある。みんな我慢しているんだ。それを『辛い。もうやだ。仕事したくない。動けない』といって仕事をサボっておきながら、飲み会には参加して楽しく過ごせるなんて、甘え以外の何だというのか」

これが健常の人の感じ方だ。

しかし…ちょっとだけ想像力を働かせてみてほしい。

非定型うつ病のAさんは、健常のあなたより、ちょっと落ち込みやすいのだ。だから、同じ仕事をしていて、同じように上司に叱られても、Aさんはあなたよりも、ぐっと辛い思いをしている。それが積み重なって、家に帰ってもふとしたことで辛い思いを思い出して焦燥感に駆られたり不安になったりするようになる。これがずっと続き、ついには仕事に行けないようになる。これほど辛い思いをしているとき、人はどうなるだろう?まずは自分を責めるはずだ。自分はなんてダメなやつなんだ。自分で自分を押しつぶしてしまいそうになる。仕事には行けない。仕事に行くと、また責められて辛くて潰れてしまうかもしれない。仕事に行かなくても、思い出して辛くて潰れてしまいそうだ。せめて飲み会に行ったり、友達に会ったりして、何とかして辛い思いを忘れたい…。

非定型うつ病のAさんは、こういう精神状態に置かれているのだ(多分)。ここから分かるように、Aさんは非定型うつ病を患った結果として、表面上自分に甘い行動をとってしまっているのだ。「自分に甘いのが原因で、その結果として仕事には行かず飲み会には行く」のではない。「辛い気持ちで潰されそうになる→仕事に行けず、娯楽で忘れるしかない→結果、表面上甘えているように見える」という流れなのだ。

健常のあなたは、Aさんからその唯一の逃げ道さえも奪いたいというのだろうか?

 

非定型うつ病を病気と呼ぶか否か?

実は、ある症状を病気と呼ぶか否かというのは、それほど本質的な問題ではない。たとえば、医学会の重鎮が「インフルエンザは病気ではありません」と宣言したとしよう。この宣言はいったいどういう意味をもつのだろう?現実に、高熱と関節痛と頭痛で苦しんでいる人がいることに違いはない。これを病気とラベリングするかどうかによって変わるのは、その人に対する社会の対応である。たとえば、保険適応になったり、学校を休めたりする。でも、インフルエンザが病気だろうとそうじゃなかろうと、インフルエンザの苦しさは一つも変わらないのである。

非定型うつ病についても同じで、これを病気とラベリングするかどうかによって変わるのは、社会の対応である。病気なら多少は会社を休みやすくなるだろうし、本人の意識も和らいだりするだろう。ただ、これが病気とラベリングされようとそうじゃなかろうと、本人が抱える症状は一つも変わらないのである。

 

病気であると認められることは、社会的に得

ここで一つ触れておくべきことは、病気であると認められることは社会的には得になることが多いということだ。たとえば、毎晩8時になると体が勝手に踊り出す人がいたとしよう。こいつは、ふつうに考えればただの奇人である。しかし、ひとたびこれが病気と認められれば、この人は非常にかわいそうな人に見えてくる。それに、保険の範囲で治療してもらえるようにもなるかもしれないし、夜8時前に退社させてもらえるかもしれない。同じ症状でも、「病気」と認められることは得なのだ。

明確な境界線がない

また、インフルエンザと非定型うつ病の一つの違いにも触れておこう。インフルエンザは、ウイルス検査をすればはっきりとインフルエンザかそうではないかが分かる。一方、非定型うつ病は、客観的な根拠に基いて明確な線引をすることができない。

「明確な境界線がないうえに、病気と認められれば得」なのであれば、非定型うつ病ではないのに、それを自称するやつも現れてくるのは当然のことだろう。そして、そういうやつに限って、声高に権利や自らの不幸な境遇を騒ぎたてるだろう。このことは、本当に非定型うつ病で苦しむ人の居場所をなくすことになるだろう。

医者も病気と診断したい

精神科医の立場にたってみても、自分の患者が増えるのはビジネスチャンスが増えることなので、何でもない症状を「非定型うつ病です」と診断することは、金銭的には得なのだ。メタボだのなんだの、予備軍ですとかなんとかいって自分の治療対象を増やすというのは、どの分野の医者もよくやっていることだ。

こうして考えると、「非定型うつ病」の診断は、医者にとっても患者にとってもwin-winなのである。これでは、非定型うつ病もどきが増幅し、うさんくさいイメージが定着し、社会的信頼が地に堕ちるのも必然の結果である。

 

「新型うつは甘え」と断罪する健常者へ

まとめに代えて。

もしあなたが「新型うつは甘え」と判断したとしても、そのような立場を言明するのは賢明ではない。どんな理由であっても人を傷付けるのはオススメできないし、そうした言動はあなたが狭量であることを人に見せつけることにもなる。

ぼくはずぶとい性格なので、これからもうつ病になることは多分一生ない。それでも、うつの人と接するときは、疑いではなく理解の目を向けるよう意識していきたい。

*1:非定型うつ病の一部は軽度のPTSDであると考える人もいる

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